美濃隆章(みの たかあき)は、日本のインストゥルメンタル・バンド toe のギタリスト。バンドでの演奏と並行してレコーディング・エンジニアとしても長く活動しており、演奏者と録音技術者の両方の立場から音を組み立てる点に特徴がある。toe の作品では、自身が録音やミックスを担当することも多い。 toe は2000年に結成された。編成は、美濃隆章と山嵜廣和の2本のギター、山根さとしのベース、柏倉隆史のドラムという4人。歌を中心に置かない編成を軸に、変拍子や手数の多い生ドラムを生かしたアンサンブルで知られ、日本国内にとどまらず欧米でのツアーも重ねてきた。バンドは自主レーベル Machupicchu INDUSTRIAS を運営し、自身の作品のほか mouse on the keys などのリリースも手掛けている。 エンジニアとしての美濃は、toe の作品のほか、クラムボン、mouse on the keys、ゲスの極み乙女。、Chara、bonobos、LUCKY TAPES、soha といった幅広いアーティストの録音・ミックスに関わってきた。2020年には自宅にプライベート・スタジオを構えている。30畳ほどの空間を間仕切りし、約10畳のブースとコントロール・ルームに分けた造りで、ドラム録りからミックスまで一貫して行える。内装の仕上げやルーム・チューニングは自ら手掛けた。中核となるのは Mac Pro と Pro Tools|HDX のシステムで、コンバーターに CRANE SONG Hedd 192 を据える。モニター・スピーカーは ADAM A7X を使ってきたが、その後 GENELEC 8341 と GLM 4 による自動補正環境を導入している。マイクは COLES 4038、NEUMANN U47 FET、KM84、SCHOEPS M221A、SENNHEISER MD421 など、アウトボードは NEVE 33115、UREI 1176LN、TELEFUNKEN V76 や V672 などを揃えている。 エンジニアリングに踏み出した背景には、演奏者でありながら録音も手掛けるジョン・マッケンタイアのような存在への憧れがあったと本人が説明している。機材は、エンジニアの中村公輔から3万円で譲ってもらった SOUNDCRAFT のミキサーとオーディオ・インターフェースに、中古の Power Mac G4 を組み合わせるところから始まった。toe の初期 EP は中村が録音とミックスを担当しており、1980年代的な作り込んだ質感やデジタル・リバーブを避けるという方向性を、当時から二人で共有していた。 ギターは Fender の Jazzmaster を長く使い続けている。ライブでもレコーディングでも1961年製のヴィンテージ個体を用いており、20年ほど Jazzmaster を弾いてきたこと、どのポジションを弾いても音量のバランスが崩れず、すべてのフレットで安定して鳴ることを、その理由として挙げている。 足下は、クリーンからクランチの領域を中心に組まれている。歪みよりもディレイやモジュレーションの比重が高く、それらを特注のループ・ボックスで切り替える構成が長く維持されてきた。信号はまずチューナーの PolyTune 3 に入り、CULT の Ray を通ってから F-sugar の 4LOOP BOX へ向かう。ループ内には、単音とコード・ストロークの音量差を均すコンプレッサーとして KATANASOUND の Blue Stripe、上下の帯域を削ってピッチを揺らす使い方をする Strymon の Mobius、Pro Co の RAT 2、そして大きい音量側で使う BOSS DM-2 Delay が収まる。ループ・ボックスの出力からは、小音量側で使うもう1台の DM-2 Delay と Line 6 の DL4 Delay Modeler を経て、ローランド製のテープ・エコーへ信号が送られる。DL4 Delay Modeler は20年以上にわたって同じプリセットを呼び出し続けているという。電源供給は Free The Tone の PT-3D、外部スイッチには BOSS の FS-5L を使う。 レコーディングでは、ギターをいったんラインで素のまま録り、あとからリアンプする手順を採る。素の音を残しておかないとリアンプ時の選択肢が狭まるという考えによるもので、ライン録りには Umbrella Company の SIGNALFORM ORGANIZER を用いる。アンプは1961年頃の Bassman ヘッド、VOX の AC30、Deluxe Reverb などを曲ごとに選び、キャビネットは Orange PPC212 に JBL D120 と Celestion Vintage 30 を組み合わせた。最終的なアンプの選定は、ミックスの段階で山嵜廣和と相談しながら決めることもある。アコースティック・ギターの録音では、オン・マイクに NEUMANN U87、ルーム・マイクに COLES 4038 を立て、EQ は不要な成分を取り除く程度にとどめている。音色については、多少ノイズが乗っているほうを好む。 ケーブルの使い分けにも言及がある。ギター・シールドは Oyaide の QAC-202G を中心に据え、レコーディングでは曲のニュアンスに応じて G-Spot Cable も選ぶ。アコースティック・ギター用には銀線仕様の FTVS-408 を、エンジニア作業まわりの電源には BLACK MAMBA-α V2 を用いる。Y-UP でも、こうしたケーブル類からペダル、アンプ、Pro Tools といった制作側の機材まで含めた使用機材の登録を確認できる。 アレンジ面では、山嵜廣和が作ったトラックをコンピューター上で切り貼りしながらギターを重ねていく進め方を採り、セッション形式での共同作業はほとんど行わない。リズムに引き寄せられるように音を置き、メロディとは別の次元でフレーズを組み合わせることに関心を寄せている。音楽的な出発点としては、中学時代に触れたピンク・フロイドやイエスといった1970年代のプログレッシブ・ロックを挙げ、その後パンクやハードコアを経てポストロックに行き着いた。変拍子を自然に受け入れられる感覚はプログレを通ってきたことによるものだとし、マイルス・デイヴィスの発想法についても影響として挙げている。
写真は同モデルの一例や代表写真のため、本人の実際の使用モデルとは色やパーツが異なる場合があります。
Fender
Jazzmaster (1961)1961年製のヴィンテージ・ジャズマスター。サンバースト、べっ甲柄ピックガード、ローズウッド指板。クリーン・トーンを軸にしたメイン・ギターで、ライブやレコーディングなどで使用。
VOX
AC30トップ・ブースト仕様のヴィンテージ・コンボ・アンプ。ジャズマスターとビッグ・マフを組み合わせた爆音セッティングで使用。
Fender
Bassmanブロンド・トーレックスのヴィンテージ・ヘッド。譲り受けたキャビネットと組み合わせ、自身のスタジオでサウンドチェックに使用。
AER
Compact 60アコースティック用のコンボ・アンプ。ピエゾ・ピックアップを付けたガット・ギターをつないで使用。
Fender
Deluxe Reverb (1964)1964年製のブラックフェイス期のコンボ・アンプ。クリーン・トーンでの使用が中心で、エフェクターの音出しやスタジオ作業でも使っている。
Electro-Harmonix
Big Muff Pi (1970s)70年代のラムズヘッド期のヴィンテージ・ビッグマフ。ジャズマスターとVOX AC30を組み合わせた爆音セッティングで使用。
KATANASOUND
Blue Stripe1176系の回路をモチーフにしたコンプレッサー/リミッター。歪ませずに音量を上げるブースター的な用途で、ループの先頭に配置している。
Line 6
DL4 Delay Modeler20年以上使い続けるディレイ・モデラー。SWEEP ECHOと、ディレイ・タイムを長めに設定したREVERSEをプリセットし、ルーパーも使用。
BOSS
DM-2 Delay2台使うアナログ・ディレイのうち、大きい音量で発振させる側。ループ・ボックスに接続し、踏んだ瞬間に強い発振が出る設定にしている。
BOSS
DM-2 Delay2台使うアナログ・ディレイのうち、小さい音量の発振用。ループ・ボックスのアウトから、もう1台のDM-2と並べて通している。
Electro-Harmonix
Deluxe Electric Mistressフランジャー/フィルター・マトリックス。ニューヨーク製のヴィンテージ個体で、デラックス・リバーブにつないで使用。
EarthQuaker Devices
Disaster Transport SR2系統のディレイにリバーブとモジュレーションを備えたペダル。2018年頃のペダルボードで上段に配置。
Cooper FX
Generation Loss V2磁気メディアの劣化を再現するローファイ・ペダル。WOWとFLUTTERでピッチを揺らし、LP/HPフィルターやノイズで質感を作る。2021年に入手。
Eventide
H9マルチエフェクト/ハーモナイザー。自身のスタジオでの音作りの実験に使用。
Strymon
Mobiusマルチ・モジュレーション。上下の帯域をカットしたラジオ・ボイス的な音や、ピッチを大きく揺らす音作りに使う。FILTERとDESTROYERが主なモード。
Moog
Moogerfooger MF-104Mタップ・テンポを備えたアナログ・ディレイ。自身のスタジオでの音作りの実験に使用。
TRIAL
New Old-D.I.トランスとバッファ・プリアンプを組み合わせた国産のアクティブD.I.。Instagramで確認できる。
Maxon
OD820 Overdrive Proグリーン筐体のオーバードライブ。CULTによるクリーン・ミックス搭載のモディファイ個体。Instagramで確認できる。
TC Electronic
PolyTune 3メイン・ボードに2台配置するポリフォニック・チューナー。ギターからの信号が最初に入る位置に置いている。
Pro Co
RAT 2 (1980s)80年代製の個体。粒の粗いディストーション感が特徴で、ループ・ボックスの3ループ目に配置。「エソテリック」や「F_A_R」などで使用。
CULT
Rayボード上のオーバードライブ。少し歪むプリアンプ的な使い方で、練習スタジオの常設アンプや海外でのレンタル・アンプでも好みのツヤを作れる。
MXR
Stereo Chorusイエロー筐体のヴィンテージ・ステレオ・コーラス。自身のスタジオでの音作りの実験に使用。
Tube Works
Tube DriverB.K.Butlerが設計した真空管オーバードライブ。長く動かないままだった個体を、修理とモディファイのうえ使用。
Mogami
2524自作のパッチ・ケーブルに使うケーブル。スイッチクラフトのプラグと組み合わせ、音に色づけをしないことを狙って選んでいる。
F-sugar
4LOOP BOX4ループを備えた特注のループ・ボックス。踏み間違いを防ぐためスイッチ間隔を広げ、パッシブ仕様で音が変わらない設計。2018年の北米ツアー頃から使用。
Oyaide
BLACK MAMBA-α V2エンジニアとしての作業時に使う電源ケーブル。I/Oの電源に採用している。
ACOUSTIC REVIVE
Digi Link Cable for Pro ToolsPro Tools用のデジリンク・ケーブル。type A(Digi Link Mini-Digi Link Mini)を、HDX PCIeカードとオーディオ・インターフェースの接続に使用。
Oyaide
FORCE'77Gボード内のパッチ・ケーブルとして、2台あるDM-2のうち1台の接続に使用。
BOSS
FS-5Lラッチ式のフットスイッチ。メイン・ボードの左端に配置している。
Oyaide
FTVS-4084N純銀導体のケーブルで作られた特別仕様のシールド。アコースティック・ギターに使用し、タッチへの反応が細やかに出る。
Oyaide
G-Spot Cableレコーディングで曲やセッティングに応じて使い分けるギター用シールド・ケーブル。しっとりさせたい曲で選んでいる。
Free The Tone
PT-3Dボードの電源供給に使うパワーサプライ。9V端子からDM-2などへ給電している。
Oyaide
QAC-202Gライブで使うギター用シールド・ケーブル。LIVE DVD『CUT_DVD』の頃から使い続け、レコーディングではG-Spot Cableと使い分けている。
Avid
Pro Tools自身のスタジオでのミックスに使うDAW。全チャンネルをパラで立ち上げて作業し、システム処理にはHDX PCIeカードを併用。
Grado
RS1リファレンス・シリーズのオープン型ヘッドフォン。マホガニー製ハウジングを備える。GRADOのレコード針とともにInstagramで確認できる。
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